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川崎殺傷の犠牲者「またチェロを弾きたい」願いかなわず

「また戻ってきてくれると思っていた」。川崎市多摩区の路上で登校中の児童らが襲われ、2人が死亡、17人が重軽傷を負った事件で、犠牲となった栗林華子さん(11)が通っていたチェロ教室の講師、佐藤明さん(64)が取材に応じ、悔しさをにじませた。


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華子さんは母親の影響を受けて、3歳からチェロを習い始めた。クラスを盛り上げる人気者で、小学校であったこともその都度話してくれた。「色々なことに興味がある、好奇心旺盛な子だった」


バッグにお菓子をたくさん詰めて、周囲に配る優しさを見せる半面、チョコレートを3分の2食べてから、食べ残しをくれるという冗談上手な一面も。「ユニークなところはお母さんそっくりだった」と振り返る。


小学4年生のコンサートの時、演奏前に落語を披露し、会場を盛り上げたが、演奏がうまくいかずに涙を見せた華子さんが印象に残っている。


事件の翌日の29日、佐藤さんは華子さんの自宅を弔問に訪れた。


華子さんの母親は、涙ながらに当時の状況を打ち明けた。華子さんを駅まで車で送って自宅に着いた時、友人からのメールで事件を知った。華子さんの携帯電話のGPSを確認すると、華子さんは事件現場から動いていなかった――。気丈に振る舞う父親には「さみしくなりますね」と声をかけることしかできなかった。


帰らぬ人となった華子さんは、顔に少し傷が残っていたが、化粧をして寝ているような穏やかな顔をしていた。華子さんの手をそっと握り、「チェロ、楽しかったね」と語りかけた。


佐藤さんが最後に華子さんに会ったのは、6年生になる直前の今年3月。塾通いのため、チェロ教室を退会した。佐藤さんの手元に写真は残っていない。「中学生になったら、またチェロを弾きたい」。華子さんの願いはかなわなかった。(岩本修弥)


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