安藤ゆきのマンガ「町田くんの世界」が映画になった(7日公開)。監督は毎回一筋縄ではいかない作品を手がける石井裕也。主人公の男女を新人が演じ、周りを主役級で固めた。少女マンガの世界を石井流の解釈で実写化した実験作だ。
高校生の町田くん(細田佳央太〈かなた〉)が、保健室で出会った猪原さん(関水渚〈なぎさ〉)と恋に落ちる。博愛精神が過ぎる町田くんは、周りの人々をイラつかせながら、彼らの心を変えるが、町田くん自身にも変化が……。
マンガを実写化する際の心得を、石井監督はこう語る。「マンガだと、町田くんは純粋な善として存在しうるけど、実写ではそうはいかない。走れば汗をかくし、おなかも減る。思春期だから性的興味もあるでしょう。人間としての生理から目をそらすと、実写映画は絶対に面白くならない」
町田くんの外側にある悪意にも目を向けたという。「彼は『世界は美しい』などと言います。しかし例えば、シリアで起こっていることを見たうえで言っているのか。日本でも広がる格差はどうなんだ。そこを見ずして『世界は美しい』と言うのは傲慢です。そこからやろうと思いました」
高畑充希、前田敦子、岩田剛典ら、アラサーの人気俳優が高校生を演じる。ゴシップ誌記者の池松壮亮を含め、他人の善意が信じられない今の風潮を彼らが体現する。「町田くんという人間離れしたキャラクターを浮き立たせてくれた。彼らは既に青春を経験しており、青春とは何かを知っている。だから本当の高校生より高校生らしく見える」
一方、町田くんには細田、猪原…