首相や副総理、トヨタ自動車のトップ……。政財界を見渡せば、政治家や創業家の3代目が目立つ。家運を傾かせるのも、繁栄の道を築くのも、すべては3代目の力量次第だ。
桜井博志さん(旭酒造会長)
日本酒の「獺祭(だっさい)」を山口県の山あいで造っている酒蔵の3代目です。祖父が始めて父親が継ぎ、長男の私は子どものころから「『売り家と唐様(からよう)で書く3代目』で、3代目はみんな家をつぶすんだ」とおどかされたものです。ほかの子どものように、野球選手になりたい、科学者になりたいという夢を抱いたこともありましたが、たいして運動も勉強もできんし、酒蔵を継ぐ方がいいなあと。
高度成長が過ぎると、日本酒の売れ行きが急激に落ち込むようになりました。大学を出て今の日本盛に入りましたが、継ぐつもりで家に戻りました。ところが、やり方を変えない父親と大げんかして、2年で追い出されてしまいました。墓石や建材の御影石を売っていたら、父親が亡くなって継ぐことになりました。
売り上げが減り続けて1億円を切り、いきなり熱湯に放り込まれた感じでした。父親がいないから、紙パックに入れてみたり、地ビールを造ってみたり、レストランを出してみたり。やりたいようにやりましたが、失敗続きでした。まさに絵に描いたような3代目です。
でも、一度追い出されて、今度…