陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」をめぐり、防衛省の失態が相次いでいる。配備の「適地」とした根拠を示す報告書に誤りが発覚し、住民説明会では職員が居眠りする場面もあった。配備の候補地では不信感が広がっている。
10日、秋田市であったイージス・アショアをめぐる防衛省の住民説明会は、冒頭から荒れた。「いい加減にしろ」と怒号が飛び、伊藤茂樹・東北防衛局長のマイクを、参加者の男性が取り上げる場面もあった。
防衛省は、イージス・アショアの新屋(あらや)演習場(秋田市)への配備に関し、他に候補地がないか青森、秋田、山形3県の国有地計19カ所を調査。うち9カ所は、弾道ミサイルを追尾するレーダーを遮ってしまう山が周囲にあるという理由で「不適」としていた。
ところが、その根拠である山頂を見上げた「仰角」が、いずれも実際より大きく記されていたことが判明。秋田県男鹿市では、西に位置する本山の仰角を15度としていたが、実際には4度しかなかった。地元紙が5日に報じ、与野党の県議・市議から「『新屋ありき』で進められたのではないか」「数値の改ざんにしか聞こえない」などの疑念が噴出した。デジタル地球儀「グーグルアース」を使用し、山の縮尺が縦方向に拡大されていることに気づかず、実際とは異なる角度を記載していたという。
防衛省幹部は県議会や市議会で「調査全体の信頼性を失墜させかねない。大変申し訳ない」と陳謝した。地元の16町内会などでつくる新屋勝平地区振興会の佐藤毅事務局長(71)は「あまりにもお粗末。新屋への配備を前提にした後付けなのでは」と語る。
さらに8日の住民説明会で、防衛省職員が居眠りをしていたことが発覚。岩屋毅防衛相は10日、「極めて大事な説明の場で、緊張感を欠いた誠に不適切な行為だった。厳重注意をした」。菅義偉官房長官も会見で「いっそう緊張感を持ってしっかり対応してほしい」と釘を刺した。
不信感は、もう一つの配備候補地、陸上自衛隊むつみ演習場を抱える山口県萩市と隣接する阿武町にも広がる。
報告書の誤記載について萩市の藤道健二市長は「調査に対する信頼が損なわれることにもなりかねない」とコメント。阿武町の花田憲彦町長は取材に「稚拙なミスで驚いた。故意に誤ったとは思いたくないが、すべてのデータについて、大丈夫ですかという話になる」と述べた。計画に反対する市民団体には、同町の有権者の55%余りが加入する。市民団体の吉岡勝会長は「むつみ演習場についても、全てのデータが信用できない。もう一度、全ての調査をやり直すことも必要じゃないか」と話す。
身内の防衛省内からも、あきれ…