「沖縄の民意」を踏まえて米軍基地問題の議論を深めてもらおうと、沖縄県の玉城デニー知事が11日、全国を巡る「トークキャラバン」をスタートさせた。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐっては、2月の県民投票で「反対」が7割以上を占めたが、政府は埋め立て工事を強行している。本土の世論を喚起することで、局面の打開を図りたい考えだ。
初日となった11日は、東京都内で安全保障の専門家らを交え、「沖縄の声を聞き、皆で考えてみませんか?」などと題したシンポジウムを開催した。米国でロビー活動を実践するシンクタンク「新外交イニシアティブ」が事務局を担う。来春にかけて、各地の都市部を中心に講演やシンポジウムを開いていく予定だ。
この日、玉城氏は基調講演で、普天間や辺野古をめぐる問題は日米安保体制や民主主義、地方自治にかかわるとして「そういう大きい問題だということを全国の人に伝えていきたい」と全国行脚の意図を説明。「私たちがどんなに声をあげても、『国民が声をあげないんだから』と高をくくられたら政府はやりたい放題です」「自分ならどうするのか、一人ひとり主権者として、この国のことを考えていただきたい」と呼びかけた。
県民投票実施の署名集めの中心となった大学院生の元山仁士郎さんは「県民投票の結果を尊重して欲しい、普天間基地の問題は全国の問題ですよ、という内容の意見書を採択するように陳情を出している。沖縄に行かずとも、みなさんがお住まいの地域でも取り組みができる。広げて欲しい」と話した。
玉城氏は昨年10月の知事就任以降、日本記者クラブや日本外国特派員協会で複数回記者会見を開いたり、都内の大学で講演したりなど、メディアへの露出を意識してきた。政府が進める埋め立て工事に対して、世論喚起が数少ない対抗手段となっている。
2003年には、当時の稲嶺恵一知事が相次ぐ米兵犯罪を受けて、基地を抱える全国の知事らをまわって日米地位協定の改定を訴えたことがある。(伊藤和行、木村司)