今年8月、第7回「アフリカ開発会議」(TICAD)が横浜で開かれる。それに先立ち、「アフリカ経済をどう見るか、アフリカとどう関わっていくべきか」をテーマにした講演会(日本貿易振興機構・アジア経済研究所、世界銀行主催、朝日新聞社後援)が東京都内であった。世界銀行アフリカ地域担当チーフエコノミストのアルベア・ズーファック氏と、アジア経済研究所の平野克己理事が議論した。(宋光祐、篠健一郎、渡辺淳基)
アルベア・ズーファック氏(世界銀行アフリカ地域担当チーフエコノミスト)
アフリカの人口は2050年には20億人まで増加する。そのほとんどが都市で暮らし、都市人口は世界最大になる。これは大きなビジネスチャンスだ。なぜなら都市の人たちが住宅、電力、水など様々なサービスを必要とするからだ。消費の視点でも、中間層と高所得層は25年までに1億人に達する。企業はこうした人々に向けた製品を開発するべきだ。先月、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)協定が発効した。将来的に20億人が暮らす単一市場ができる。
アフリカが貧困を撲滅し、成長していくためにはどうすればいいのか。
まず必要なのは、貿易の構造を見直すことだ。これまでアフリカの輸出は石油など1次産品が中心だったため、相場の変動に影響され、経済を自分たちでコントロールできなかった。
貿易相手の中心は過去5年ほどの間に欧州からアジアに移り、中国、インド、トルコなど多様化している。この流れの中で、高度成長を遂げるには、1970年代の東アジアのように付加価値の高い製品をつくり、輸出主導型の成長モデルに転換しなくてはならない。そのためには製造業が必要だ。エチオピアには、米大手ブランドのジーンズを1日に2万本生産する工場があり、ケニアも製造業で雇用を作り出している。アフリカ諸国は製造業を発達させるために、外資や域内の企業が投資できる環境を整えるべきだ。
東アジアと同じ段階を踏む必要はない。デジタル革命のおかげで、アフリカは「リープフロッグ」と呼ばれる一足飛びの発展を実現できるからだ。
例えば、西アフリカ・ガーナの企業が製造したドローンは今、輸血用の血液を運んでいる。道路などのインフラが整備されていなくても、山や谷を越えて必要な場所に届けられる。携帯電話のショートメールを使った送金サービス「M―PESA(エムペサ)」が普及したケニアでは、人々の生活が様変わりした。
世界銀行もデジタル革命に注目…