8日に実施された南アフリカの総選挙(下院、定数400)で、与党アフリカ民族会議(ANC)が11日未明(開票率98・59%)時点で得票率57・68%を獲得し、勝利を確実にした。2014年の前回選挙から5ポイント弱減らしたが、汚職撲滅や経済再生を訴えてきたラマポーザ大統領の手腕は一定程度、評価された形だ。
比例代表制のため、ANCの過半数獲得は確実視されている。選挙管理委員会の発表によると、白人を支持基盤とする最大野党・民主同盟(DA)の得票率は約20・68%と、前回から微減。黒人の権利擁護を訴え、黒人の若者から支持を集めた経済的解放の闘士(EFF)は、4ポイント以上増え、10・66%を得ている。
ANCは国民的人気を誇る故ネルソン・マンデラ氏が率いた党で、1994年の同国の民主化以降、政権を握り続けている。
ただ、ズマ前大統領時代に汚職や詐欺疑惑が相次ぎ、経済も低迷。世論調査では一時、ANCに投票すると答えた人の割合が47%にまで減少。総選挙での過半数割れが現実味を帯びたため、昨年2月、ズマ氏は辞任に追い込まれた。
後任のラマポーザ氏は、マンデラ氏の元側近で、実業家としても知られる。付加価値税(消費税)を25年ぶりに引き上げて緊縮財政を実施。汚職の取り締まりも進めるなど、産業界からの支持を集めた。
黒人の若者の失業率は50%を超え、国営電力企業の経営難で計画停電が続くなど、国民の不満はくすぶる。党内の派閥争いもあり、今後の政権運営は難航も予想されている。(ヨハネスブルク=石原孝)