安倍晋三首相は12日夜(日本時間12日深夜)、テヘランでイランのロハニ大統領と会談した。会談後の共同記者発表でロハニ師は、米国による経済制裁の緩和を条件に、外交努力による事態打開に意欲を示した。首相は米・イラン両国を念頭に「お互いが努力しなければならない」と述べ、歩み寄りを促した。
米国が昨年5月、核合意から離脱して経済制裁を復活させたことに対し、イランは核合意の履行の一部停止を打ち出すなど反発。米国は原子力空母を派遣するなど、周辺国を巻き込み中東情勢は緊迫している。
記者会見でロハニ師は、「我々は米国との戦争を望んでいない。だが、攻撃を受ければ断固たる措置をとる」と強調。一方で、「地域の緊張は米国による経済戦争が理由だが、それが終わればいつでも地域と世界にとって肯定的な進展が待ち受けている」と会談で主張したと明らかにした。
また、ロハニ師は「首相が今後の見通しについて楽観的な考えを示し、前向きな展開が進行中だと述べた」と述べ、緊張緩和を促す首相の姿勢を歓迎した。
会談は河野太郎外相、谷内正太郎国家安全保障局長らが出席した少人数会合と、参加者を拡大した会合の2部構成。予定の倍近くの約2時間10分に及んだ。
日本政府によると、少人数会談の冒頭、首相は「軍事衝突は誰も望んでいない。緊張緩和を働きかけるためにこのタイミングで訪問した」と伝えた。イランの核合意履行の継続についても評価した。
記者発表で首相は「何としても武力衝突は避ける必要がある」と自制を求めた。米国の名前は挙げなかったものの、米・イラン両国を念頭に「かなり忍耐のいる努力だと思うが、それでも中東地域、世界の平和のために、やり遂げなければならない」と歩み寄る必要性を強調。「緊張緩和に向け、日本としてできる限りの役割を果たしていきたい」と述べた。
首相は13日午前(同13日午後)、イランの最高指導者ハメネイ師と日本の首相として初めて会談する。国政の最終決定権を握り、大統領を上回る権限を持つハメネイ師に、事態打開を働きかけるとみられる。首相は記者発表で「ハメネイ師が核兵器などの大量破壊兵器はイスラムに反するとのファトワ(宗教見解)を表明していることに、深い敬意を表する」と言及した。(テヘラン=伊沢友之、小野甲太郎、杉崎慎弥)