京阪神の都市部で最大震度6弱を観測し、6人が死亡、6万5千件を超す住宅被害があった大阪北部地震から、18日で1年を迎えた。震源に近く、ブロック塀が倒れて女児が犠牲になった大阪府高槻市の小学校では関係者らが献花し、通学路の安全を誓った。
癒えぬ悲しみ・自責の念…ブロック塀倒壊、元校長手記
高槻市の寿栄(じゅえい)小学校。地震が起きた午前7時58分、浜田剛史市長と市教育委員会の樽井弘三教育長らが校門前で献花し、黙禱(もくとう)した。1年前の朝、登校中だった4年生の三宅璃奈(りな)さん(当時9)が倒れたブロック塀の下敷きになり、亡くなった。
4月に着任した佐藤美恵校長は「安全であるべき学校で大切な命を失った。すべての子どもが笑顔で過ごせるよう全力で取り組む」と決意を語った。全校集会では児童ら約320人に事故を説明した。現場の塀はフェンスに替わった。
多くの市民も花を手向けた。中学生の子どもがいる岡本華世さん(46)は「決して忘れてはいけない事故。保護者も学校と協力し、子どもを守っていきたい」。赤迫和彦さん(72)は「私たち地域住民も、いっそう子どもに目を配りたい」と話した。
浜田市長はその後、市役所で「地震の記憶を風化させず、災害に強い街づくりを進める」と幹部職員に訓示。樽井教育長は記者会見で「(事故は)痛恨の極み。ご遺族に心からおわびする。二度と事故を起こさない学校づくりを進める」と誓った。
この1年間、市は再発を防ぐことに力を注いだ。市内の小中学校と公共施設のブロック塀を全て撤去する方針を決め、通学路に面した民間ブロック塀の撤去に最大100万円を補助する制度もつくった。今年8月には市教委に学校安全課をつくり、PTAや自治会、警察と連携して子どもを守る仕組みを整える。
地震では、小学生の見守り活動に向かっていた大阪市東淀川区の男性(当時80)も、民家の塀が崩れて犠牲になった。
各地でも学校と通学路の安全対策が進む。
文部科学省は今年度、全国の公立学校で総延長1千キロに及ぶブロック塀の撤去・補強を進める。国土交通省は、避難路沿いの家屋や民間のブロック塀の耐震診断を、自治体が所有者に義務づけられるようにした。
朝日新聞のまとめでは、地震による死者は7府県で6人、重軽傷者は約460人。住宅被害は5府県で6万5千件を超えた。(室矢英樹)