元慰安婦の証言を伝える記事を「捏造(ねつぞう)」と記述されて名誉を傷つけられたとして、元朝日新聞記者の植村隆氏(61)が、西岡力・麗沢大客員教授と「週刊文春」を出版する文芸春秋に計2750万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、東京地裁(原克也裁判長)であった。判決は請求をいずれも棄却した。植村氏は控訴する方針。
植村氏は1991年、韓国人元慰安婦の金学順(キムハクスン)さんの証言を朝日新聞で記事化した。この記事に対し、西岡氏は週刊文春2014年2月6日号で「捏造(ねつぞう)記事と言っても過言ではありません」とコメントするなどした。植村氏は、名誉を傷つけられ、教授に内定していた大学との雇用契約の解除を余儀なくされたなどとして、15年に提訴した。
判決は植村氏の記事について、「金さんが日本軍により、女子挺身(ていしん)隊の名で戦場に連行され、従軍慰安婦にさせられた」という内容を伝えており、事実と異なると認定。植村氏の取材の経緯などを踏まえ、「意図的に事実と異なる記事を書いた」として、西岡氏の記述には真実性がある、などと判断した。また、慰安婦問題は「日韓関係にとどまらず、国際的な問題となっていた」として表現の公益性も認め、賠償責任を否定した。
植村氏は同様の訴訟をジャーナリストの櫻井よしこ氏と別の出版3社を相手に、札幌地裁にも起こした。同地裁は昨年11月に請求を棄却し、植村氏は札幌高裁に控訴している。
植村氏は現在、「週刊金曜日」の発行人兼社長。判決後に記者会見し、「裁判所は私の意図を曲解し、西岡氏らの責任を不問にした。ひるむことなく言論人として闘いを続けていきたい」などと述べた。(編集委員・北野隆一)