野球に興味を持ってもらおうと、新たな取り組みを始めた学校がある。
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2月末、敬徳の野球部員たちは、同じ佐賀県伊万里市内にある大川保育園にいた。園児たちに「ティーボール教室」を開くためだ。
「ティーボールコーン」と呼ばれる、三角形の頂点の部分にボールをのせられる専用のコーンを使った、野球に似た競技。投手はいなくて、ボールは目の前で止まっているので打ちやすい。怖がらないよう、軟らかいボールとスポンジのバットを使う。
部員たちはゴロを「ボールが転がる」と言い換えたり、園児の目線に合わせしゃがんで教えたり。「走るときは手を縦に振って下さい。横じゃありませんよ」と、徳永太監督(31)が「欽ちゃん走り」に似た横走りのマネをすると、園児たちはどっと笑った。
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敬徳がこうした教室を開いたのは初めてだった。昨年5月、日本高野連などが野球人口を増やそうと「高校野球200年構想」を発表し、県高野連を通じてティーボール用具の貸し出しを始めたのがきっかけだ。徳永監督は「少年野球の指導者から『入会者が減っている』と聞き、何かできないか考えていた」と話す。自身にも3歳の男の子がいて、人ごとではないと思ったという。
反応は上々。永田恵子園長(57)は「バットで打つので、ボールを直接蹴るサッカーと違い、道具を使って考えて取り組む点でいい」と話す。用具は自由に貸し出され、実際に遊ぶ園児もいるという。
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県内で部員が最も多い佐賀工(佐賀市)。最近は100人以上を数えていたが、昨春、3桁を割った。
今年3月、佐野努監督(41)は部員たちを連れて小学校に行き、少年野球チーム向けに野球教室を開いた。野球人口の減少を実感し、「できることは何でもやろう」と思ったからだ。
練習はノックなどの一般的なものだったが、思わぬ効果があった。監督と部員でやりとりする野球ノートには「積極的に教えるのが楽しい」「目の前の子が成長するのはうれしい」と教える側になった感想が。それだけでなく「楽しそうにボールを追う姿を見て初心に戻った」「小さな手で一生懸命ボールを取り、うまくなろうとする姿に野球の楽しさを思い出した」などと、自分のプレーにも刺激を受けたと書いてきたのだ。佐野監督は「高校は正直、きつい練習が多くて、精神的に疲れる。だが、こんなことを書いてくれたのは感動した」と振り返る。
佐野監督は4月、三養基に移った。「様々な部に行き、野球人口が減るのは仕方ない。だが何もしないのはおかしい。手探りだが、野球の楽しさを知ってもらう活動をしていきたい」と、ここでも同様の取り組みを続けるつもりだ。(松岡大将)