どんぐりの一種であるシイの実の化石が、南半球で初めて南米アルゼンチンのパタゴニアで見つかった。北半球で進化して定着したと考えられてきたブナ科植物の中で、シイ属は南半球で進化し、北半球にも広がった可能性が出てきたという。同国と米国の研究チームが科学誌サイエンスに報告した。
研究によると、シイの実の化石はアルゼンチン南部・パタゴニアのラグナ・デル・フンコの約5200万年前の地層で発見された。シイ属に似た葉っぱの化石も多く見つかり、葉の化石全体の1割を占めていたという。
シイ属の植物はこれまで、北半球から熱帯域のニューギニアまで南下したと思われていた。現在も日本を含むアジアを中心に広がっている。
しかし、今回の発見で、シイ属がむしろ、かつてゴンドワナ大陸の一部であった南米で進化し、南極やオセアニアを経て、アジアへ北上した可能性が出てきた。現在、南米やオセアニア、ニューギニアなどに離れて分布する植物は、ゴンドワナ大陸があった時代に生まれ、その後の大陸移動によって分布が離れたと考えられ、ゴンドワナ関連植物と呼ばれてきた。シイ属もこうした形で分布を広げた上で、その後に南米でアンデス山脈が隆起したり、南極が高緯度に移動したりして寒くなったことで、南半球の大半では絶滅したとチームはみている。
パタゴニアを訪ねたことがある中央大の西田治文教授(古植物学)は「シイ属の起源や分布の移り変わりにゴンドワナ大陸が深く関与した可能性が浮上してきたことは、たいへん面白い成果だ」と受け止めている。
論文はサイエンスのサイト(
https://science.sciencemag.org/content/364/6444/eaaw5139
)で見られる。(米山正寛)