浙江省温州一帯に伝わる「甌繍」は、千年以上の長い歴史を持つ伝統的な民間刺繍芸術。唐・宋代に始まり、明・清代に盛んになった。構図はシンプルで、鮮やかな色彩を用い、細やかで変化に富んだ刺繍技法で、絵柄を美しく、つややかに仕上げていく。その題材は山水や人物、動物、書などで、鑑賞品や装飾品としての価値も高い。2008年には国務院により第2陣の国家級無形文化遺産に指定された。
王施さんと施成権さん母子は、4代にわたって甌繍の技術を受け継いできた。王施さんは温州の甌繍で唯一の国家級無形文化遺産伝承者だ。王施さんがデザインし、 施成権さんが刺繍を施した作品「荷墨」(蓮と墨)は、甌繍で初となる表と裏で色の異なる刺繍作品。水に墨が広がっていく様子からインスピレーションを得てデザインしたという。1日に8時間 刺繍の作業を続け、完成まで少なくとも半年かかったという大作だ。息子の施成権さんは、甌繍とおしゃれなアイテムやファッションと組み合わせるなど、伝統的な甌繍を若い人にも受け入れてもらいやすくするための取り組みも行っている。施さんは、「甌繍をさまざまな面から若者に伝えていきたい」と考えている。(編集AK)
「人民網日本語版」2020年11月5日