WTOの新ラウンド非公式閣僚会議で、日本が反対していた農産物への上限関税が採用される流れが強まり、日本は関税削減で特別扱いとなる「重要品目」の確保に目標を絞り込む戦術に転換するしかない状況になってきた。
日本の農産物輸入品目は1326品目。そのうち約3分の1は関税がゼロで残りの多くも10%未満と低いが、内外価格差などから関税が高い農産物もかなりある。品目数はコメ17、乳製品47、砂糖56、小麦20などだ。大幅な関税引き下げを求められると産地の存続にかかわる問題になるだけに、生産者の反発は必至だ。
このため、日本は当初から重要品目について「十分な数」を要求。日本やスイスなど食料輸入国で構成するG10は10日、重要品目数を輸入品目の10~15%とする関税引き下げ方式を提案した。10%を確保できれば、日本の重要品目数は132になり、必要な数をぎりぎりで守れるとの思惑が背景にある。ただ、米国は重要品目数を1%とすることを提案しており、重要品目数をめぐる攻防が今後の焦点の一つになる。
一方、日本は、重要品目を十分確保できなかった場合、一律のルールに縛られる一般品目に回された農産物が大幅に関税を引き下げられるのを防ぐため、上限関税に強く反対している。農林水産省の石原葵事務次官は13日の会見で「状況が厳しいのは当初から分かっていた。(今回の会議を踏まえて)立場を急転回させる必要はない」と、反対の主張を変えない姿勢を示した。
ただ、「食料輸入国の立場に支持が広がるのは難しい」(政府筋)と、上限関税導入は避けられないとの見方も強まっている。【位川一郎、小島昇】