【シカゴ高橋秀明】米大リーグのワールドシリーズは22日(日本時間23日)、当地で開幕する。88年ぶりの「世界一」を狙うホワイトソックス(ア・リーグ中地区1位)と、創設44年目で初優勝を目指すアストロズ(ナ・リーグ中地区2位・ワイルドカード)は、機動力やバントを絡めたきめ細かい戦術を用いる似た者同士。今年からドーピング(禁止薬物使用)検査が本格化したことと関連づけ、「腕力から知力の時代に移った」(USAトゥデー紙)という見方もある。
ともにリーグ2位の防御率を誇る一方、打線に著名なスラッガーがいるわけではない。アストロズの本塁打数はリーグ9位の161本にとどまる。しかし、3位の115盗塁、4位タイの82犠打が示すように一つずつ塁を進めていく。リーグ4位の200本塁打をマークしたホワイトソックスも、長打力だけに頼らない。137盗塁は3位、53犠打は1位だ。
米大リーグ機構は今年から1回目の違反で10日間の出場停止となる、より厳格な新薬物規定を導入した。昨年までは1回目の違反に罰則がなく、出場停止処分はゼロだったが、今年はパルメイロ(オリオールズ)のような強打者も出場停止に追い込まれた。大リーグ全体の本塁打数が前年比8%減の5017本に大幅ダウンしたことと新薬物規定を関連付ける見方は、少なくない。
今季は本塁打の減少傾向に敏感に反応し、戦術を駆使して1点を積み重ねていくスタイルに転換した2チームがワールドシリーズにコマを進め、重量打線に頼りすぎたヤンキースとレッドソックスが地区シリーズで敗れた。時代を象徴するシリーズがまもなく始まる。