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憂楽帳:テロリストの役

米国映画「ユナイテッド93」の上映が英国でも始まった。01年の米同時多発テロで墜落した旅客機の悲劇をドキュメンタリー風に描いたこの映画で、テロリスト4人を演じたのは無名のアラブ系英国人俳優だ。

 カリド・アブダラさん(25)はその一人。両親はエジプト人だが、英国で生まれ育った。16歳で演劇を志し、ケンブリッジ大学の劇団で演じたこともある。

 米国を襲ったテロの当日はフランスにいた。舞台の役作りでひげを伸ばしていたため周囲の厳しい視線を浴びた。英国に戻っても「アラブ人なのに、なぜ英国なまりか」と怪しまれた。

 「偏見を助長するだけかも」と映画出演を一時はためらった。しかし「大切なイスラム教がテロで踏みにじられた経緯を伝えたい」と考え直し、テロリストのリーダー役を好演した。

 「英国もエジプトも私自身の一部」と思う。困難でも二つの祖国と向き合って俳優を続けていくつもりだ。「でもテロリストの役は大変だった。しばらくはやりたくないよ」【山科武司】

毎日新聞 2006年6月15日 12時38分

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