弁護側の冒頭陳述の要旨は次の通り。
■偽計・風説の流布
検察官はあたかも、LDグループ全体を舞台とする計画的な意図に基づいて行われた重大な犯罪であるかのように主張するが、幻想に過ぎない。偽計や風説の流布とされる会社買収の公表は、買収に伴って行われただけで何の意図もない。
検察官は会社買収に伴う株式交換比率(1対1)が適正でないというが、企業の買収で客観的に唯一の価格が存在するわけではない。また、第三者機関が交換比率を算定した事実がないというが、原案を作成したのがライブドアファイナンス(LDF)の従業員であっても、第三者機関の日本M&Aマネジメントの担当者が確認し、その内容を了承した上、その責任において株式交換比率算定報告書を作成したので虚偽はない。
堀江被告本人は原案をLDFが作成したことなど知らず、企業買収の公表に関与したことはない。LDMの04年1~9月期の損益で黒字にするよう求めたのは事実だが、それは経営者として当然で、架空売り上げを指示した事実はない。
■粉飾決算
自社株売却益の利益計上は違法ではない。検察官がダミーと指摘する各ファンドは実体を有していた。LDはクラサワとウェッブのほか(起訴事実の対象外として)人材派遣会社「トライン」と株式交換を行ったが、ファンドを通じた売却代金2億6589万円のうち、1億6589万円は行方不明となっている。ファンドがダミーであるなら多額の資金が行方不明になるはずがない。
堀江被告はクラサワとウェッブとの株式交換で発行されたLD株を、いつ、誰が、どういう経緯で、どのように処分しているかについて何ら知識がなかった。04年9月期の連結財務諸表で売り上げ計上してはならないものが含まれているとの認識はなく、会計監査人から指摘を受けたこともなかった。キューズとロイヤルへの架空売り上げを指示した事実はない。04年9月期の連結経常利益の予想値が50億円に上方修正されたのは事実だが、被告は達成可能な数字と認識していた。
■その他
検察官は、LDグループは被告の独裁下にあるかのような主張をしているが、幻想に過ぎない。被告は創業時から宮内被告を信頼し、税務・会計的な事務はほとんど宮内被告に一任し、実質的には対等の立場にあった。05年暮れごろの宴席で宮内被告が堀江被告の肩を抱き「LDはおれの会社だよな」と言い、堀江被告が「僕は表の顔としてPR活動頑張ります」と答える場面があった。
また、検察官は被告が05年に4000万株を売却し約140億円の資金を得たことをもって、被告が保有株の資産価値の上昇を図ったかのように主張しているが、見当外れも甚だしい。被告が個人的利益を追求していたなら公開時に400億円超の資産を手にしていたはずだが、そのようなことは一切していない。
毎日新聞 2006年9月4日