飲酒運転の取り締まりの際に、警察の呼気検査を拒否するなどして、道路交通法違反の飲酒検知拒否容疑で検挙される件数が、02年に飲酒運転の罰則が強化されて以降、毎年500件近くに増えていることが警察庁の調べで分かった。検知拒否の罰則は罰金刑だけ。懲役刑も規定されている酒酔い・酒気帯び運転よりも軽い処分を狙い、運転者が検査逃れを図っているとみられる。
同庁によると、呼気検査拒否の検挙件数は、酒酔い・酒気帯び運転の罰則を強化した改正道交法が02年6月に施行される以前は年間300件程度だったが、02年に478件と急増した。この改正で、酒酔い運転の罰則は3年以下の懲役か50万円以下の罰金、酒気帯び運転は1年以下の懲役か30万円以下の罰金になったが、検査拒否は5万円以下の罰金のままだった。このため検査拒否が増えたとみられている。検査直前に警察官の目の前で持っていた酒を重ね飲みして、運転時の酔いの程度が分からないようにごまかし、検査拒否の容疑で検挙された人も少なくないという。
検査拒否の検挙は03年も473件、04年482件と、500件近い水準で推移。このため、04年11月に道交法を改正し、5万円以下の罰金を30万円以下に引き上げた。同庁は法改正の効果を検証するため、改正後の04年11月~05年10月まで1年間の全国の検挙数を特別に調査したが、検挙件数は479件で前年同期に比べ12件増え、歯止めはかからなかった。
取り締まり現場では、こうした検査拒否以外にも、警察官の姿を見て逃走を図る悪質運転者が後を絶たない。福岡市東区で8月に起きた幼児3人が死亡した飲酒運転事故では、逮捕された運転者が検査前に友人の大学生に頼んで運ばせた多量の水を飲んで証拠隠滅を図っており、大学生も証拠隠滅容疑で逮捕された。同庁は「今後も悪質な検査逃れは厳しく取り締まっていきたい」と話している。【遠山和彦】
毎日新聞 2006年9月14日