米大リーグ、レッドソックスの松坂大輔投手(26)が18日午前(日本時間同日深夜)、当地でキャンプインし、メジャー1年目のスタートを切った。日米の関心を集める「1億ドル(約120億円)の男」がキャンプ地で巻き起こしている狂想曲とは--。【フォートマイヤーズ(米フロリダ州)高橋秀明】
■初日練習1時間半
午前9時すぎにグラウンドに姿を見せた松坂投手は、日本ハムから加入した岡島秀樹投手と軽くキャッチボールしてから、主力組としてブルペン入り。胸に「RED SOX」が入った背番号「18」の赤い練習用ユニホーム姿で、バリテック捕手を相手に直球主体で47球を投げ込んだ。計1時間半あまりの練習メニューをこなした。
初日の練習を終えた松坂投手は「初めてユニホームを着て、いい緊張感の中で疲れもしたけど楽しめた」と話した。
■日米報道陣過熱
背番号18を追って、20台近いテレビカメラ、約250人の日米報道陣が動いた。抜群の宣伝効果に目をつけたのは「日米でのブランド確立」を狙う船井電機(大阪府大東市)。今年からレッドソックスと契約を結び、キャンプ地の球場に広告看板を出している。
現地校に通う日本人の子どもを対象にしたマイアミ補習校の児童・生徒と保護者ら約150人も詰めかけた。同校の足利弘樹校長は「異なる環境の中で苦労している子供たちに、元気を与えてくれた」。
米メディアでも、ポスティング・システム(入札制度)の落札額と総年俸を合わせて1億ドル以上の松坂投手は、時の人。最近もニューヨーク・タイムズ紙が、横浜高時代に夏の甲子園準々決勝で250球を投げた後、決勝で無安打無得点試合を達成したことを紹介。「今度は大リーグの舞台で、伝説をつくろうとしている」と締めた。
■球団VIP待遇
そんな松坂投手を、球団はVIP待遇で迎えている。
クラブハウスの松坂投手のロッカーは、向かって右隣が正捕手のバリテック選手、左隣が岡島投手。1日も早く捕手と呼吸が合うようにという配慮の一方で、日本語で話せる相手を近くにという心配りも。
さらに契約時の付帯条件で、ボストンの自宅のほか、キャンプ地の住宅手当も最大2万5000ドル(約300万円)が保証されている。家族同伴でキャンプ地に家を構え、そこから球場へ「通勤」が可能だ。合宿生活の日本と比べて、松坂投手は「いつもは“キャンプ頑張ってらっしゃい”ですが、今は毎日“頑張ってきて”ですから。不思議な感じがする」。
■「ルーキー」強調
周囲の盛り上がりに、松坂投手本人は戸惑っている面もある。「新人という謙虚な気持ちでやっていくつもり。チームメイトの迷惑になっていると感じたら、素直に謝る」と気遣いを見せる。
言葉の壁もある。松坂投手は「(相手の)話している内容は分かるつもりだが、うまく返すことができない。チームメイトといい関係を築くためには、コミニケーションが必要」。英語に堪能な妻倫世さんを相手に、家で毎日、レッスンを積んでいるという。
特にボストンはメディアとファンが時に辛らつで、コミュニケーションにたけていて損はない。過去には野茂英雄投手が1年でボストンを去ったが、ボストン・グローブ紙のゴードン・イーデス記者は「野茂は表情を変えなかったが、大輔はよく笑う。彼はきっとうまくやる」と話す。
◇正捕手・バリテックの「観察眼」 松坂に洗礼
【フォートマイヤーズ(米フロリダ州)高橋秀明】米大リーグ、レッドソックスの松坂大輔投手は18日、当地でキャンプイン。先発ローテーションを担う主力組に入り、47球をブルペンで投げ込んだ。初日、松坂が最も衝撃を受けたのは、正捕手・バリテックの「観察眼」だった。
キャンプ初日、先発ローテーションの5人がそろい踏みした。松坂はシリング、ベケット、パペルボン、ウェイクフィールドと同じグループに入って、投球練習。正捕手のバリテックを相手に、6~7割の力でストレート中心にバランスとリズムを重視して投げた。高めに抜ける球もあったが、「ボールが多少滑ったが、周りを見ていると、慣れだと思う」と修正できる範囲のようだ。
「最初のブルペンからバリテックに受けてもらって、楽しかった」という正捕手からは、投球の時に頭がぶれる悪いクセを指摘されたという。「投げ始めのころによくある。言われれば、すぐ直せるんですが。バリテックはすぐに見抜きましたね」と、改めて目の付け所に驚いていた。
時間は約1時間半と短いが、テンポが速く、密度が濃い練習に「着替える暇もなかった」と戸惑った。チームメートとの英語での交流にも難しさを感じたという。それでも松坂は青空の下で「自分のペースでやれたと思う。楽しい一日だった」と、屈託のない笑顔を見せた。