大相撲春場所は3日目の13日、朝青龍が普天王を厳しい攻めで相手にせず初日を出した。栃東は安馬に粘られたが、地力の差を見せて3連勝。白鵬は取り直しの末、雅山を押し出した。千代大海、琴欧洲も白星を重ねた。魁皇は時天空の変化についていけず2連敗。
〈マイク集〉
○琴光喜 右が入ったので終始自分の流れで取れた。(3連勝に)まだ序盤だし、気にしていない。
○高見盛 (初日に)これで全敗がなくなった。昨日は悪いことばかり考えそうだったから早く寝たよ。これで少しは気持ちよく眠れる。
●雅山 (取り直しの末に白鵬に敗れ)もう年の差ですね。向こうは元気だったけれど、こっちはいっぱいいっぱいだった。
○豊ノ島 (先場所に続いて初日から3連勝)自分でも考えられない。この地位で勝てているということは、調子は良いと言うことでしょうね。
○出島 (3連勝で「好調」との問いかけに)(朝青龍から金星を挙げた)先場所も「調子いいね」と言われてから、ガタガタになったからな。
○栃東 (土俵の角で)左の親指打っちゃった。ひざは大丈夫。組まれたけれど、よくしのぎましたよ。
●魁皇 気持ちでは踏み込んでいるが、右足に力が入らない。支度部屋じゃそんなことはないんだけど。
◇戻った電光石火の攻め…会心の笑顔の朝青龍
代名詞だった電光石火の攻めが戻った横綱は、前日までとは別人だった。立ち合いから普天王を問題にせず土俵の外に追いやった朝青龍。連敗から解き放たれ「嫌な気分が全部なくなった感じ」と、3日目にして会心の笑顔を見せた。
どこか散漫だった集中力が、戻った。「立ち合いだけを考えた」との言葉通り、当たると同時に左を差し、さらに右の前みつをぐいと引き寄せて自由を奪うと、後はただ前に出るだけ。「出遅れたというより、横綱が速かった。完ぺきだった」と、普天王は他人事のように振り返った。
決して万全とは言えなかった。八百長報道に加え、直前のけいこで古傷の右ひじに「電気が走った」。テーピングし、点滴も打ったという。
前夜に「験直しに一杯飲んだよ」。この日は気分転換もプラスに働いた。支度部屋では「こういう相撲が初日から取れればいいのにねえ」と軽口も飛び出した。
「体全体でばーんと、真っすぐ当たっていたね」と評価した北の湖理事長。しかし「今日はほっとしただろうが、白星が先行するまではまだまだ。明日の豊ノ島は調子がいいよ」と、完全復活はまだ先、とみる。ただ、「今までは人の流れ。今日は自分の流れだった」と朝青龍。遅過ぎた初日だが、横綱の自信は戻った。【錦織祐一】
〈花道〉
○…新小結の時天空が4度目の挑戦で魁皇を破った。立ち合いで右に変化。バランスを崩した魁皇を軽々と押し出した。右上手を許すと勝ち目のない相手だけに「当たって横につこうと思った」と策にはめた。初日は朝青龍を破り、この日は大関も破る殊勲の星。勝ち越しが難しい新三役の場所で、上位陣との対戦で2勝1敗の好スタートを切った。同じ時津風部屋の豊ノ島も3連勝しており、「負けていられない?そうっすね」と気合いを入れていた。
○…前日、朝青龍を寄り倒した雅山の強烈な突きに、まわしに手が届かない白鵬。激しい突き合いから互いに足を滑らせて土俵に倒れ込み、一度は白鵬に軍配が上がるも、物言いがついた判定は同体。白鵬は「勝ったと思ったけど、こっちも倒れちゃったしな。気持ちを切り替えて」と取り直しの一番に臨んだ。相手の突きを良く見て右へのいなし。勢い余った雅山を押し出し、「体も動いているし、相手の動きも良く見えている。いい相撲だと思いますよ」と満足顔だった。
毎日新聞 2007年3月13日 19時03分 (最終更新時間 3月13日 20時24分)