【ベルリン=赤川省吾】欧州中央銀行(ECB)は4日、ギリシャの銀行に対する資金供給の条件を厳しくすると発表した。これまではドイツなど北部欧州の健全な銀行と同じように扱ってきたが、この「特例措置」を撤廃する。ECBからお金を受け取ることが難しくなるギリシャの銀行の資金繰りが厳しくなるのは確実。改革路線の放棄に傾くギリシャのチプラス政権にECBが警告を発した格好だ。一部で楽観論もあった市場に影響が広がる恐れがある。
ECBは、ユーロ圏の銀行から安全資産とされる国債などを担保として受け取り、その見返りに低利で資金を供給(融資)している。本来ならば「不合格」となる格付けの低いギリシャ国債も特例で担保として認め、ギリシャの銀行の資金繰りを支えてきた。
4日の定例理事会で、この特例措置の停止を決定。11日から適用することにした。
一方、ギリシャ中銀が独自に資金繰りを支えることは容認する。このためギリシャの銀行の資金繰りが即座に行き詰まるわけではない。
金融市場では信用不安が再燃している。ギリシャの新政権が早期に現実路線に転換するとの予想に反し、非現実的なばらまき策に固執。欧州主要国との関係がぎくしゃくしているからだ。
ギリシャの銀行では預金の流出が続くが、いつまで持ちこたえられるかは不透明だ。ギリシャの銀行危機が再燃するとの受け止めが広がった外国為替市場では4日深夜(日本時間5日朝)、通貨ユーロの対ドル相場が急落した。
一連の措置には、もはやギリシャを特別扱いしないというECBの強いメッセージが込められている。2013年にキプロス政府が改革を渋った際にECBは銀行への資金供給を絞り、政府の退路を断った。ギリシャの新政権にも同じような手法を使い、財政再建を続けるように迫っている。
ECBは1月22日の理事会でユーロ圏の国債を大量に買い取る「量的緩和」を決めた。その際にも「財政再建を公約しなければ、ギリシャ国債を購入対象にしない」とクギを刺していた。
ギリシャのバロファキス財務相は4日、ECBの決定に先立ってフランクフルトを訪れ、ドラギ総裁と会談していた。財政規律を緩める新政権の方針を説明したが、それにECBが同意しなかったのは明らかだ。ギリシャ側は5日にベルリンを訪れ、ショイブレ独財務相と会う。