【ニューヨーク=清水石珠実】米連邦通信委員会(FCC)のトム・ウィーラー委員長は4日、インターネット回線を事実上の「公共財」とみなして、ネット回線の運営会社を厳しく規制する案を公表した。特別料金を払った一部の大口顧客を通信速度で優遇する行為を禁じる条項などが盛り込まれた。同案の採否は26日、FCCの委員5人が投票して決定する。
高速大容量のネット回線を運営している通信会社やCATVなどが規制の対象。スマートフォンやタブレット(多機能携帯端末)のネット接続を提供する通信企業も含まれる。
新規制は、ネット回線企業が合法的なコンテンツの流れを不当に阻害したり、配信速度を遅くしたりする行為を禁じる。一方、他の公共インフラサービスにあるような料金設定の許可制は導入しない。価格政策の自由度を与えることで規制強化に反発している通信企業に配慮する。新規制により、ネット回線企業が投資を手控え、高速化への対応が鈍る懸念もある。
動画配信の普及などでネット上を流れる情報量が爆発的に増え、ネット回線企業の負担が重くなっている。その状況下ですべての情報を平等に扱う「ネット中立性」をいかに維持するかが新規制の根幹にある。
FCCは昨年5月、ネット回線会社が安定した通信環境を提供する対価としてコンテンツ会社から追加料金を受け取る行為を認める方針だった。その後、オバマ米大統領がこうした規制緩和に反対したため、議論の行方が注目されていた。
米メディアによると、26日のFCC投票では新たな規制案が可決されるとの見方が有力。だが、米通信大手が新規制の無効を訴える裁判を起こすのは不可避とみられ、最終決着までにはなお曲折も予想される。