外務省は7日、シリアへの渡航を計画していた新潟市在住のフリーカメラマン、杉本祐一さん(58)に、旅券法に基づいて旅券(パスポート)を返納させた。邦人人質事件を踏まえ、渡航を強制的に阻止した。杉本さんはトルコを経由してシリアに入国することを公言していたという。こうした措置は初めてで、憲法が保障する「渡航の自由」との兼ね合いで論議を呼ぶ可能性もある。
外務省は警察とともに杉本さんに自粛を強く要請したが、渡航の意思を変えなかったという。外務省職員が7日、杉本さんに会い、命令書を渡して旅券返納を求めた。これに杉本さんが応じた。
杉本さんは共同通信の電話取材に「過激派『イスラム国』の支配地域に入るつもりはない。シリア国内の難民キャンプなどの取材をするつもりだった」と話した。さらに「取材と報道の自由どころか、言論の自由を妨げる行為だ」と述べ、政府の対応を批判した。
渡航阻止の法的根拠について、外務省は旅券の名義人の生命、身体、財産の保護という旅券法19条の規定に基づいて、緊急に旅券の返納を命じたとしている。この規定による返納は初めて。
杉本さんは人質事件を巡る新聞のインタビューでシリアに入国する考えを表明していた。
外務省幹部は6日、個人的意見としたうえで、イスラム国の支配地域を目指す渡航者の出国禁止措置を検討すべきだとの考えを記者団に明らかにしていた。〔共同〕