【ベルリン=赤川省吾、モスクワ=石川陽平】独仏ロの首脳が6日、モスクワで会談し、ウクライナ情勢を巡って協議した。だがウクライナ政府と親ロ武装勢力は停戦ラインをどこに引くのかなどで思惑がすれ違う。欧米もウクライナへの軍事支援で温度差がある。関係者が駆け引きを続けるなかでメルケル独首相は7日、「武器供与では事態は解決しない」と語り、外交に望みを託した。
ウクライナ東部での戦闘が1月中旬から激しさを増したため、独仏が和平の仲介に乗り出した。メルケル独首相とオランド仏大統領の2人がまずキエフに飛び、5日にポロシェンコ・ウクライナ大統領と会談した。
翌6日にはモスクワでプーチン大統領と3者会談に臨んだ。和平に向けた共同文書を作成することで一致。8日にポロシェンコ大統領を交えて4者で電話協議することでも合意した。
ここで和平への道のりを固めて、メルケル首相が9日にオバマ米大統領と会談。米国の了承も取り付けるというのが欧州側のシナリオのようだ。
独仏の最大の狙いはウクライナの経済破綻を食い止めること。「ウクライナの経済安定になにができるのか考えないといけない」。7日、外交問題などを話し合うミュンヘン安全保障会議に出席したメルケル首相は、そう語った。
ロシア側にも和平に向けた機運がある。親ロ派の「後ろ盾」になっているロシアは対ロ制裁と原油価格の低下でマイナス成長が確実視され、経済が疲弊している。ペスコフ大統領報道官は「建設的で内容がある話し合いだった」と独仏ロの首脳会談を評価した。
こうした情勢の変化を受けて親ロ派武装勢力の幹部は7日、独仏ロ・ウクライナ4カ国協議後に、直ちにウクライナ政府との直接協議に入りたい意向を示した。
ただ武力衝突を終えたいということでは一致しても、その条件となると思惑がすれ違う。1月中旬に大規模な攻勢に出た親ロ派は支配地域を拡大中。それをウクライナ側に返還するように求めれば、直接交渉が難航する火種になりかねない。
幹部のデニス・プシリン氏は7日、インタファクス通信に「ウクライナ政府による戦闘停止が最も重要だ」と指摘。支配地域の独立状態を今後も維持したいとの考えをにじませた。
ウクライナが親ロ派地域に高度な自治権を与える「連邦制」に移行するかも焦点。それが実現すればロシアはウクライナ政府の外交政策に介入し、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を阻む構えだ。もちろん欧米は反対。ポロシェンコ大統領は6日、5日の仏独首脳との会談で「連邦制は全く検討されなかった」と改めて拒否した。
こうしたなかで米国ではウクライナ軍を武器供与などで軍事支援する構想が浮かぶ。「軍事的には解決できない。それが現実だ」。そうメルケル首相はけん制するが、和平仲介が決裂すれば、米ロの代理戦争に発展しかねない危うさがある。