文部科学省の国立教育政策研究所は12日、小学4~6年生を対象に学習理解度を調べた2012年度の「学習指導要領実施状況調査(旧教育課程実施状況調査)」の結果を公表した。「脱ゆとり教育」路線に転換した現行指導要領を導入後、初の調査。同一問題の多くで前回より正答率が上昇するなど基礎学力の定着がみられた。一方、高度な思考力に依然として課題があった。
同様の傾向は07年から実施している「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)でも出ており、学力の改善基調が改めて裏付けられた。調査結果は次期指導要領を検討している中央教育審議会の12日の部会に報告された。
調査は13年2~3月に対象学年の児童の3%にあたる約11万人に対して行った。「ゆとり教育」から脱却し学習量を増やした11年度導入の現行指導要領に基づき、国語、算数、社会、理科の4教科を中心に学力を調べた。
全体の約900問のうち、ゆとり教育当時に行った03年度の前回調査と同じ問題は算数、理科、社会で計70問。前回より正答率が高いと判定された問題は30問あり、差がない問題(17問)や前回より低い問題(23問)を上回った。
分数の計算力をみる6年の算数の問題の正答率は41.2%で、前回(36.7%)より4.5ポイント上昇。日本の国土の知識を問う5年の社会の問題の正答率は62.6%で同14.2ポイント高かった。
点対称の図形に関する6年の算数の問題は、現行指導要領で中学1年の数学から前倒しされた内容。正答率は87.1%で、同じ問題を中1の生徒が受けた前回(66.9%)を上回った。
正答率が6割を下回り「課題」とされたのは、文章から的確な情報を読み取る国語の問題や、地図やイラストなどの資料を活用して産業の動向を説明する社会の問題など。国立教育政策研究所は「複雑で高度な思考力が必要な問題はなお苦手な傾向がある」と分析している。
小中高校の次期指導要領は16年度に答申され、文科省は20年度以降、小学校から順次導入する方針。