防犯カメラが捉えた容疑者の映像を積極的に公開する警視庁の取り組みが成果を上げている。2012年に慎重姿勢から転換。映像を見て「逃げ切れない」と出頭してくるなど、昨年末までに公開した70件のうち約4割で容疑者逮捕などにつながった。対象の事件を拡大し、簡易投稿サイト「ツイッター」や街頭の大型ビジョンでも映像を流すようになっている。
強盗事件などの情報提供を呼び掛ける街頭ビジョン(東京都新宿区) 「映っているのは自分です」。14年9月末、警視庁西新井署に内装工の男(21)から電話があった。 東京都足立区で4月から、若い女性が尿をかけられる事件が連続発生。容疑者の手掛かりがつかめず捜査は難航していたが、8月上旬に起きた8件目の現場付近で逃走する白い作業着姿の男が防犯カメラに映っていた。 同署が警視庁のホームページなどで映像を公開したところ、約3時間後に男が名乗り出てきた。暴行容疑で逮捕された後の調べでは「はっきりと自分の顔が映っていると分かり、逃げ切れないと思った」と供述したという。12月19日に東京地裁は懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。 警視庁刑事総務課によると、映像公開を本格的に始めたのは2012年2月。公開する映像については▽容疑者が成人であることが確実▽犯行がはっきり映っているなど別人である恐れがない――などの基準を設けている。 英国で容疑者の動画を公開して情報提供を求める英国放送協会(BBC)の番組「クライムウオッチ」をきっかけに事件が解決する例が相次いだことから、11年10月に当時の警視総監の指示で具体策を検討するプロジェクトチーム(PT)が発足。基準などを検討したうえで積極公開にかじを切った。 当初、捜査現場には「公開映像を見た容疑者が警戒し、逃げてしまう」「映ったときの服装を処分するなど証拠隠滅の恐れがある」と懸念が強かったが、これまでのところ捜査に支障が出た例はないという。 映像公開を知った容疑者が名乗り出たり、親族が通報したりするケースが続いたことで現場も次第に積極的になり、月に1~2件だった公開件数は3~4件に増えている。14年5月からは、殺人や強盗などに絞っていた公開対象を窃盗や暴行などに拡大。ツイッターへの投稿や都内4カ所の大型ビジョンでの放映も始めた。 ただ、強盗事件で画像公開後に出頭してきた容疑者を逮捕したところ、少年法が氏名や写真の公表を禁じている17歳の少年だったことが判明したケースもあった。刑事総務課は「容疑者が成人かどうか、公開前にさらに慎重に判断していきたい」としている。 常磐大大学院の諸沢英道教授(刑事法学)は「防犯カメラの性能が向上するなか、鮮明な容疑者の姿を公開するのは有効だ」と評価する。ただ、「映像だけで犯罪が立証できるわけではない。ほかの様々な証拠と突き合わせ容疑を裏付けることが大切」と話している。 |
映像公開「逃げられない」 警視庁、犯人の顔を街頭などに
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