オウム真理教元信者、高橋克也被告(56)の東京地裁(中里智美裁判長)での裁判員裁判で13日、地下鉄サリン事件の審理が始まった。高橋被告側は無罪を主張し、検察側と全面的に対立している。公判は16日から死刑囚を含む元信者ら10人以上の証人尋問に入る。事件から発生20年を迎え、新たな内容の証言が出るかが注目される。
地下鉄サリン事件は教団が起こした最大の事件で、通勤時間の地下鉄3路線、5車両でサリンがまかれ、13人が死亡、6000人以上が負傷(警察庁調べ)した。事件を首謀した元教団代表、松本智津夫死刑囚(麻原彰晃、59)ら10人の死刑、4人の無期懲役が確定している。
高橋被告はサリン散布役の豊田亨死刑囚(47)を地下鉄日比谷線の駅まで送迎した運転手役を務めたとして起訴された。
この日の冒頭陳述で検察側は、松本死刑囚が高橋被告を含む10人の実行グループを人選するなどした経緯を説明。高橋被告も参加した場で役割や計画の伝達が行われたとして「高橋被告はサリンの殺傷能力や警察の強制捜査を阻止する目的を知っていた」と主張した。
これに対し、弁護側は「『運転をしてもらう』と言われて豊田死刑囚を乗せて運転しただけ」と反論。「地下鉄でサリンをまくとは知らず、人を殺すつもりで関わったのではない」と主張した。
公判に被害者参加した遺族の高橋シズヱさん(67)らは閉廷後、東京都内で記者会見した。高橋さんは「これまでも教団の裁判を傍聴してきたが、被害者参加すると全然違う。被告人の顔がよく見えた」と感想を述べた。今も重い後遺障害に苦しむ浅川幸子さん(51)の兄の一雄さん(55)は「事件当時に引き戻された。あらためて裁判が始まったという印象」と語った。