高橋たか子(1932~2013)=2002年、首藤幹夫氏撮影
■文豪の朗読
《高橋たか子が読む「きれいな人」 江國香織が聴く》
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親交のあるフランス人女性(名前はシモーヌ)の百歳の誕生日パーティに招かれて、語り手である七十歳前後の日本人女性が、日本からフランスにでかけて行く。パーティの席上で、招待客に詩集が配られる。シモーヌが若いころから書きためてきたたくさんの詩のなかから、孫娘が選んでまとめた記念の詩集で、主人公は滞在中にすこしずつ読むのだが、それらの詩が、この小説の重要な一部になっている。とはいえ、「きれいな人」というこのユニークかつ自由な構造を持つ小説のほとんどは、シモーヌでも主人公でもないフランス人女性(名前はイヴォンヌ)の記憶と語りでできている(!)。語られるのは、ほとんど百年近くにわたって彼女が愛してきた一人の男性のことだ。
高橋たか子の朗読は、小説の終盤、滞在を終えた女性主人公が、シモーヌの詩を幾つか読んでから屋敷を辞去する場面。だから詩と小説の両方の朗読が聞ける。
エアリーというか、透明な空気…