働く女性が妊娠・出産を理由に不当な扱いを受けるマタニティーハラスメント(マタハラ)を防ぐため、厚生労働省は、企業への指導を厳しくするよう全国の労働局に指示した。妊娠や出産と、企業が解雇や降格などを行った時期が近ければ原則マタハラに当たると判断。雇用主に報告を求めるなどして被害の拡大を食い止める。
マタハラを巡っては、男女雇用機会均等法が働く女性に対して「妊娠や出産などを理由として解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない」としている。また育児・介護休業法も産休や育休を理由とした解雇を制限している。
しかし、会社側は解雇・降格の理由として、妊娠・出産ではなく、働く女性の能力不足や、会社の経営状況の悪化などが理由と主張し、女性が泣き寝入りするケースが多かった。
こうしたなか最高裁は昨年10月、妊娠した女性が勤務先で受けた降格処分が男女雇用機会均等法に違反するかについて「本人の合意か、業務上の必要性について特段の事情がある場合以外は違法で無効」と判断。労働者本人が同意している場合など例外を除き、妊娠を理由にした職場での降格は、原則として違法とする初判断を示した。
厚労省はこの判断を踏まえ、改めて全国の労働局に向けて通達を発出。ガイドラインとして、同法などのより厳密な解釈を提示した。
新たな通達は「妊娠・出産などを契機として不利益取り扱いをした場合」を違法な事例として明確化。その上で、妊娠・出産と時間的に近接して解雇・降格などの不利益な取り扱いがあれば、「因果関係がある」として原則、違法とみなす。
労働局は企業に指導や助言をしたり、雇用主に事実関係の報告を求めたりすることができる。厚労省は新たな通達でマタハラに該当するかの基準を明確に示すことで、企業への指導・監督を強化する考えだ。