【キエフ=田中孝幸】ウクライナのポロシェンコ大統領は18日、親ロシア派武装勢力との紛争が続くウクライナ東部への平和維持部隊の派遣を国連安全保障理事会に求めることを決めた。欧州連合(EU)にも警察部隊の派遣を要請する。同国政府が発表した。停戦監視の国際的な枠組みの大幅な強化につながる可能性があるが、実現には壁もありそうだ。
18日、ウクライナ東部の要衝デバリツェボから撤退し、カメラに手を振る政府軍兵士=AP
近く最高会議(国会)の承認を経て正式に要請する。東部の交通の要衝デバリツェボでは、親ロ派の攻勢で政府軍が撤退を強いられた。ポロシェンコ氏は15日の停戦発効後も親ロ派が攻撃を繰り返したと非難。平和維持部隊の受け入れは親ロ派に停戦を順守させるために「最も効果的で、最適だ」と語った。
ウクライナメディアによると国家安全保障防衛会議のトゥルチノフ書記は18日、前線地帯に加えて親ロ派が支配するロシアとの国境地帯にも部隊を送るよう求めると言明。「実現すれば危機の平和的解決への大きな一歩となる」と強調した。
東部の前線地帯への平和維持部隊の派遣は今月上旬、ロシアが提案したものの、ロシア軍部隊の参加を懸念したウクライナ側が反対を表明。12日にウクライナ、ロシア、独仏4カ国の首脳がまとめた停戦合意では非武装で中立的な欧州安保協力機構(OSCE)が停戦監視を担うと定めた経緯がある。
関係国の間では平和維持部隊が導入されれば、OSCEよりも効果的に戦闘を抑止できると期待する向きが多い。
ただ、平和維持部隊の構成や派遣地域を巡っては今後、厳しい交渉が必要になる可能性がある。ロシアから親ロ派側への武器や兵員の流入ルートとなってきた国境地帯への派遣には、国連安保理で拒否権を持つロシアが難色を示す懸念がある。
ウクライナ東部では15日の停戦発効後も一部で戦闘が続き、18日には親ロ派の攻勢の前に政府軍の拠点だったデバリツェボが事実上陥落した。ポロシェンコ氏は同日、戦火が広がった場合、全土への戒厳令の発令を辞さない考えを示した。