江戸時代後期の浮世絵の巨匠、葛飾北斎の壮年期の肉筆画の傑作で、100年以上も行方が知れなかった幻の図巻「隅田川両岸景色図巻」が発見され、4日、東京都墨田区が報道陣に公開した。
「隅田川両岸景色図巻」より吉原室内
この図巻は、縦28.5センチ、長さ6メートル33.5センチ。両国橋の近くから隅田川を舟で上って吉原に向かう両岸の景色と、遊郭での遊興場面を、彩色豊かに描いている。
1805年(文化2年)、北斎46歳ごろの作で巻末には北斎が用いた「画狂人」の印が押されている。制作依頼者は江戸の戯作者、烏亭焉馬(うていえんば)で、後半の落款にその制作事情を北斎が記している。
1892年、東京・上野で開かれた浮世絵展に出品された後、海外に流出、1902年フランスで競売にかけられた記録が残るが、その後は行方不明だった。
鑑定に当たった北斎研究の第一人者、永田生慈氏は、「陰影を用いた実景描写や遊興場面の色彩感がすばらしい。保存状態がきわめて良好で、北斎壮年期の肉筆画の最高傑作の一つ」と話す。
墨田区は約1億4900万円で購入する手続きを近くとり、来秋にも開館する「すみだ北斎美術館」で一般公開する予定。