日銀の木内登英審議委員は5日午前、前橋市内で開いた金融経済懇談会で講演した。原油価格の下落の経済に対する影響について、「全体として世界経済にプラスになりやすい」との見方を示した。一方、産油国の通貨下落・財政リスクなどマイナス効果もあるとして、「プラス効果の程度について、市場がなお測りかねている」との考えを示した。
国内景気については「緩やかな回復を続けている」と述べた。物価情勢については「原油価格の大幅下落を背景に伸び率が縮小している」とした。物価の先行きは「エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小する」との認識を示した。原油価格下落の影響がはげ落ち、「需給ギャップが改善していくとしても、物価の上昇ペースは引き続き緩やかなものにとどまる」と指摘した。2%の物価安定目標についても「達成には相応の期間を要する」とした。
消費者マインドに関する指標が昨年の夏場以降、弱めの動きをしている点には、「物価上昇率と賃金上昇率の乖離(かいり)による実質賃金の低下への懸念がある」とし、日本経済の成長率について「設備投資は増加基調に転じているものの、企業の資本ストックの蓄積が、緩やかであることを踏まえると、この先潜在成長率が短期間で顕著に上昇する姿は見込みがたい」との見方を示した。
同委員は昨年10月31日の金融政策決定会合で日銀が決めた追加金融緩和に反対票を投じた。以後の会合でも政策委員会のメンバーの中で一人だけ反対し続けている。〔日経QUICKニュース(NQN)〕