【ソウル=加藤宏一】リッパート駐韓米国大使は5日午前7時40分ごろ、ソウル市内の会合に出席した際に男にナイフで顔などを切りつけられ、負傷した。命に別条はない。容疑者は左派系団体の関係者で、警察官にその場で身柄を拘束された。聯合ニュースによると、容疑者は現場で2日に始まった米韓合同軍事演習への不満を叫んだ。
5日、ソウル市内で襲われ負傷したリッパート駐韓米国大使=ロイター
リッパート氏はソウル市中心部の世宗文化会館で開かれた南北統一をテーマにした市民団体主催の会合で、男に長さ25センチの果物ナイフで右ほおと手首を切りつけられた。現地テレビ局の映像によると、大使は顔から血を流し、切られた右ほおをハンカチで押さえながら自力で歩いて車に乗り込み、病院に向かった。
韓国メディアによると、駐韓米大使が韓国内で襲われたのは初めて。容疑者は左派系団体に所属する韓国人の男(54)で、2010年7月、島根県・竹島(韓国名・独島)を巡る日本政府の対応に反発して、当時の重家俊範駐韓日本大使にコンクリート片を投げて捕まり、有罪判決を受けた。
中東4カ国を歴訪中の朴槿恵(パク・クネ)大統領は事件の報告を受け「事件は大使への身体的な攻撃というだけではなく、韓米同盟に対する攻撃でもあり、決して容認できない」と批判するコメントを出した。
オバマ米大統領は直後に側近でもあるリッパート氏に見舞いの電話をかけて「早期の回復を願っている」と伝えた。米国務省のハーフ副報道官は「暴力行為を強く非難する」との声明を発表。米主要メディアは事件を速報した。
韓国国防省の報道官は同日の記者会見で「事件にかかわらず韓米同盟を包括的な戦略同盟関係として強固に発展させ、実施中の軍事演習は計画通り進める」と述べた。