ブラジル中央銀行は1月後半の会合で利上げについて協議した。その際、通貨レアル相場がそれから2年間、1ドル=2.65レアル前後の水準で推移すると予測していた。
実際のレアル相場は9日、1ドル=3.12レアル前後という11年ぶりの低水準に近づいて取引を終えた。年初より15%の下落だ。
かつてのレアルは強い通貨だった。わずか数年前にブラジル当局はレアル相場の対ドル上昇を抑えるための「通貨戦争」に取り組んでいた。そのレアルが国営石油会社ペトロブラスを巡る疑惑と、同国経済の急減速によって価値を失っている。
ブラジルのレビ財務相=ロイター
レアルの下落幅があまりに大きいため、アナリストたちは、レアル相場の底が見えてきたという見方に自信を持てなくなっている。ブラジルは今後、景気後退に陥ると思われるが、それが経済危機に発展するリスクは考えられない(あるいは「まだ考えられない」という表現の方がよいかもしれない)。
■資産運用会社で実務を積んだレビ氏
こうした状況で希望の光が見えてきた。前任者よりも順当な手法を使うレビ氏が新たな財務相に選ばれたのだ。レビ氏は実際の市場での実務経験がある専門家で、1月に入閣し、ブラジルに再び財政規律をもたらすと約束した。
レビ氏が財務相に就く前に務めていた資産運用会社ブラデスコ・アセットマネジメントのチーフエコノミスト、フェルディナンド・オノラト・バルボサ氏は「(レビ財務相の誕生で)以前よりも展望が開けるようになった」と指摘する。「何かをなし遂げようとするとき、彼はかなり手ごわくなるよ」
このような楽観的な見通しは、ブラジル経済とルセフ大統領の中道左派政権に対して好意的になれない市場関係者の見方と相いれないようにみえるかもしれない。
ブラジル経済は10年間ほど、そこそこ順調に運営されていた。その後、2011年に大統領に就任したルセフ氏とマンテガ財務相(当時)は12年以降、財政支出の拡大を始めた。
これにより欧州単一通貨ユーロ加盟国の危機と商品相場の好況の終焉(しゅうえん)による打撃を回避できるだけの刺激をブラジル経済に与えることができると、政府は説明した。だが、この方策には燃料やエネルギー価格の統制、一時的な効果しかない法人税の優遇措置、国営銀行の与信枠拡大などが盛り込まれ、インフレを悪化させるだけにみえた。