いつも多くの人が行き交うJR名古屋駅。「迷駅」とも言われるかいわいの中で、金の時計周辺は待ち合わせスポットになっている=13日、名古屋市中村区、吉本美奈子撮影
名古屋駅周辺の再開発が急ピッチで進んでいる。今年は4月1日にJR東海が国鉄民営化で誕生して30年を迎え、リニア中央新幹線の開業まで10年となる節目の年。新たなステージに入った名古屋の姿を報告する。
特集:テツの広場
「新幹線に乗りたいんだが、どっちだろう」
愛知県岩倉市の深田恭平さん(79)が立ち止まり、辺りを見回していた。妻(76)と京都へ向かうため、名古屋鉄道に乗って名古屋駅まで来たが、改札を出て、そのまま駅前の地下街に迷い込んだ。
杖をついて歩くそばを、人がどんどん追い抜いていく。「おーい、そっちは近鉄だぞ」。先を歩く妻に声をかける。分かれ道が次々に現れる。
外出の機会が減り、名駅かいわいに来るのは年1回ほど。「たまに来るくらいじゃ全然覚えられないね」。JR名古屋駅の中央コンコースにたどりついた時には、名鉄を降りてから20分近く過ぎていた。
乗り換えの分かりにくさから「迷駅」と揶揄(やゆ)される名駅。JR、名鉄、近畿日本鉄道、名古屋市営地下鉄、名古屋臨海高速鉄道(あおなみ線)の9路線が乗り入れ、駅前には九つの地下街が広がる。
特に難しいとされるのが、JRと名鉄・近鉄との乗り換えだ。駅の出入り口の多くが地下街とつながり、乗り換え先を探すうちに迷ってしまう。
「地下は狭い通路が多く、立ち止まったりゆっくり歩いたりする空間がない」と話すのは法政大の福井恒明教授(景観計画)。「子連れもお年寄りも、迷うまで歩かざるをえない」
2027年のリニア中央新幹線開業までに「迷駅」を返上しなければ――。名古屋市や鉄道会社の思いは一致する。市は14年9月、「名駅周辺まちづくり構想」を発表。乗り換え広場である「ターミナルスクエア」の整備を掲げた。
「乗り換え先が見渡せ、上下移動も円滑にできる広場空間」として、駅の東側に3カ所、西側に2カ所設ける構想だ。