【ニューデリー=岩城聡】インドで、保険分野への外資の出資比率の制限を現行の26%から49%に引き上げる保険法改正案が12日、国会で可決した。モディ首相は政権発足からほぼ1年で、初めて主要な経済改革で実績を示せた格好だ。政府は出資比率の上限引き上げで60億~80億ドル(約7200億~9600億円)の外資を呼び込めるとみている。保険加入率が低く潜在性のあるインド市場を巡り日本も含む外国企業の動きが活発になりそうだ。
モディ政権は外資誘致により産業振興を狙うが、昨年末の国会で保険法改正案が成立されず、苦肉の策として上限比率引き上げを「大統領令」で発布していた。しかし、6カ月のみ有効という不安定な大統領令では投資拡大を名乗り出る外資企業はなく、同法案の国会可決は政権の悲願だった。
人口12億人を抱えるインドで保険の普及率は低く、生命保険の未加入者は約5億人に上るとされる。シンハ国務財務相によると、保険収入料の国内総生産(GDP)に対する割合を示す「保険浸透率」は、3.9%と世界平均の6.3%を大きく下回る。
インドは経済発展とともに、生命保険や損害保険の需要が高まり政府も加入を奨励してきた。未加入者を減らすには既存の国内の保険会社だけでは十分といえない。シン前首相時代の2008年に外資出資比率を49%に引き上げる保険法改正案が国会に上程されたが、その後、審議が進まなかった経緯がある。
自動車保険や住宅火災保険などの需要は今後、ますます拡大することが予想される。ある日本の保険会社の担当者は「これでやっと出資拡大へ向けて、パートナー企業と具体的に協議ができる」と話している。