今週、ユーロとドルの関係が注目の的となった。当然だ。ユーロ圏は1年前、米国よりもタイトな金融政策を取っていたのだから。
しかし今週、欧州中央銀行(ECB)は新たな大型の量的緩和に乗り出した。一方で、セントルイス連銀のブラード総裁をはじめ米金融当局者は早期に利上げを行う意向を示唆した。
ユーロが対ドルで等価になるという見方が出ている=ロイター
このため、ドルとユーロの金利差が拡大し、ドルが上昇したのは驚くにはあたらない。ミント・パートナーズ(ロンドン)のアナリスト、ビル・ブレイン氏は、「今、注目のすべてはドルとユーロだ。市場関係者の50%以上がイースター(復活祭)前にユーロが対ドルでパリティ(等価)となるとみている」と述べた。
ユーロとドルのレートに関心を寄せている投資家は、目下市場で進行中の同じくらい興味深いもうひとつの変化を見落とす危険がある――円金利とユーロ金利の関係だ。
過去10年間、ユーロ圏の金利は日本の金利を十分に上回って取引されていた。たとえば2004年3月時点の期間15年のユーロ・円のフォワード・スワップ金利(相対的な利回り格差を示す)は約300ベーシスポイントで、4年前もまだ150ベーシスポイント前後あった。これは(明らかに)日本が10年以上デフレと景気低迷、超低金利から抜け出せなかったことを示している。
■「日本化」から「欧州化」へ
しかし、この様相は一変、逆転した。ユーロ圏の債券の利回りが日本の債券の利回りを下回っているのだ。例を挙げると、現在、期間15年のユーロ・円スワップは、ユーロ圏の金利が日本の金利よりも77ベーシスポイント低いことを示している。一方で、現在、10年物のドイツ国債利回りはわずか22ベーシスポイントで、日本国債は41ベーシスポイントとなっている。30年物はドイツが71ベーシスポイントで、日本が149ベーシスポイントだ。別な言い方をすれば、「不思議の国のアリス」のごとく予想もつかない事象が起きる経済状況にあって、日本はもはや唯一の(もしくは最たる)事例ではない。超低金利という意味では、ユーロ圏のパターンの方がより極端な例にみえる。