「災いを転じて福となす」ということわざがある。昨年12月からハビエル・アギーレ前監督の八百長疑惑問題で大揺れだったサッカー日本代表。2月3日に前監督との契約解除にこぎつけ、ようやく3月13日に契約に至った新監督は、このところ沈みかけている日本サッカーを大きく浮上させる力になるかもしれない。
19日、国際親善試合に臨むメンバーを発表するハリルホジッチ新監督=共同
■バックアップメンバー含め43人
19日、バヒド・ハリルホジッチ監督は23日に始まる代表活動に招集したメンバーを発表。通常は23人程度のところ、31人もの選手を呼び、さらに「バックアップメンバー」と名づけた12人もの「候補選手名」も明らかにした。
13日に来日して以来、ハリルホジッチ監督が実際にスタジアムに足を運んで見たのは2試合。14日に行われたJリーグ第2節のFC東京―横浜M戦と、18日のナビスコ杯第1節、川崎―名古屋戦だ。しかしその他の試合の多くをVTRでチェック、この日の発表となった。
「本来ならもっと時間をかけて選ぶべきだが、今回はいろいろな人の話も聞き、情報を集めて選んだ」と本人が語るように、今後Jリーグを中心に視察を繰り返していけば、さらに新たな発見もあるだろう。
それにしても、バックアップを含めて43人は、これまでになく大きな名簿だ。
「グループは大きい。日本代表の扉は全選手にいつでも開かれている。所属クラブで良いプレーを続けていれば呼ばれるということ。いつ呼ばれてもいいように準備しておいてほしい。ここから競争が始まるんだ」。国内外でプレーする日本の全サッカー選手への明確なメッセージだ。
「昨年のワールドカップの試合、そしてアジアカップの試合などを見て、日本代表にはポジティブな面とネガティブな面があると感じた」と、ハリルホジッチ氏は語る。「こうすれば良くなる。勝てる」というところが、彼にはすでに見えているようだ。
■メンバーの固定化、活力そぐ
ネガティブな面の一つは、明らかな「競争不足」だ。ザッケローニ監督時代の半ばすぎからチームは固定化の傾向があった。選手を深く信じるのがザッケローニ氏の良いところだったのだが、調子の落ちた選手、所属クラブで出番の少ない選手の調子を取り戻させるために長時間使うこともあり、固定化、チームの活力のなさにつながったのは否めない。
一方、アギーレ前監督は、最初は大胆な入れ替えをしたが、アジアカップでは完全な固定メンバーとなって控え選手のモチベーションを落とした。約2年間にわたる「よどみ」を、ハリルホジッチ氏は「43人の名簿」で一気に吹き飛ばしそうだ。