国の特別天然記念物トキの一般公開を全国で唯一実施している新潟県佐渡市が、他の飼育地でも公開可能とする方針を環境省が決めたことに反発している。長年保護活動に尽力してきたという自負と、重要な観光資源となっていることが理由。公開を目指す石川県や島根県出雲市は困惑している。
「観光、商工関係者から困ると聞いている。各地で公開されれば、佐渡に見に来ないことも考えられる」。石川県が一般公開を計画していることについて、佐渡市の甲斐元也市長は2月の記者会見であらためて難色を示した。佐渡市議会も昨年「(分散飼育の目的は)あくまでも絶滅の危機回避。公開に強く反対する」との意見書を可決している。
トキは現在、鳥インフルエンザなどによる絶滅を防ぐため佐渡トキ保護センターや、いしかわ動物園(石川県能美市)、出雲市トキ分散飼育センターなど全国7施設で分散飼育・繁殖に取り組んでいる。
佐渡市のセンターに隣接する「トキふれあいプラザ」では2013年3月から一般公開を始め、年間約20万人が訪れる観光施設となった。
環境省は保護や増殖への国民理解を深めるため、佐渡以外の施設でも公開する条件や手続きを策定。これを受け、石川県は昨年9月に計画書案を環境省の専門家検討会に提示。出雲市も同年12月、公開を目指すことを公表した。
石川県の担当者は、佐渡市側の反発に「国の方針に基づき計画書案を作成した」と戸惑い気味。「トキ保護のために佐渡が果たしてきた役割やトキ保護の重要性について紹介したい」と話す。
出雲市へはこれまで、佐渡市からの表だった反対表明はない。出雲市農業振興課の担当者は「出雲で公開することにより、佐渡のトキに対する取り組みについて関心を高められるのではないか」と理解を求める。
出雲市は公開施設の視察や意見交換会の実施などを通じ、佐渡市の納得が得られる形で準備を進めていく方針だ。環境省が佐渡市で開いたタウンミーティングでは「トキを佐渡の私有物にしてはいけない」と公開に賛成する意見も出たといい、出雲市の担当者は「手順を踏めば実現できると思う」と期待している。〔共同〕