【ワシントン=吉野直也】オバマ米大統領は3月31日、エジプトのシシ大統領に電話し、軍事支援の再開を伝えた。2013年に軍事政権が誕生したのを機にやめていたが、過激派組織「イスラム国」(IS)への対抗を優先した。軍事支援は文民政権への移行を前提としていたが、なし崩し的な再開となる。
米政府は供与を見合わせていたF16戦闘機12機、対艦ミサイル20基などを引き渡した上で年13億ドル(約1600億円)の軍事支援を復活させる。エジプトのシナイ半島ではISが襲撃事件を繰り返し、エジプトはリビアで同組織の拠点を空爆するなどISとの間で戦いが激化している。
イエメンの内戦ではイランの掌握を警戒するサウジアラビアとともにエジプトはアラブ合同軍の創設を主導している。
オバマ氏はシシ氏に軍事支援を再開するのは「不安定な地域で米国とエジプトの利益を守るためだ」と説明。ISと戦うエジプトへの支援が両国の利益につながるとの立場を示した。
一方でエジプトでの非暴力の活動家の投獄など改善しない人権問題に関して「米国には懸念がある」と批判。「言論や結社の自由などを尊重するよう求める」と民主化を促した。