【カイロ=押野真也】パレスチナ自治政府は1日、国際刑事裁判所(ICC、本部はオランダのハーグ)に「オブザーバー国家」として正式加盟した。イスラエルの軍事行動や入植活動をICCで追及するのが狙いだ。パレスチナを国家として認めていないイスラエルはパレスチナ自治政府の加盟に反発しており、両者の新たな火種になっている。
パレスチナは2012年に国連で国家に準じる資格である「オブザーバー国家」に格上げされ、ICCの加盟が可能になった。今年1月までに加盟に必要な文書を提出し、ICCへの加盟が受理されていた。
パレスチナ自治政府はICCに加盟することで、イスラエルに国際的な圧力を加えることを狙っている。特に、イスラエルが占領しているヨルダン川西岸地区への入植活動や14年夏にパレスチナ自治区ガザを侵攻し、2000人以上が死亡した件について、イスラエル側を追及する方針だ。
これに対しイスラエルは強く反発しており、イスラエルの同盟国でありICC非加盟の米国も反対を表明してきた。イスラエルはICCの調査に協力する義務はないが、こうした姿勢を貫けば、ただでさえイスラエルへの風当たりが強い欧州諸国から強い反発が起きかねない。
パレスチナの国家樹立を巡っては、米政府が仲介する中東和平交渉の中核案となっており、欧州諸国も支持を表明している。一方、ネタニヤフ首相は3月の国会選挙戦のさなか、「パレスチナ国家の樹立を容認しない」と明言。米政府の批判を受けて選挙後に撤回したものの、イスラエルの国内では右派を中心に容認しない意見も目立つ。
このため、イスラエルのネタニヤフ首相は繰り返し「(パレスチナ自治政府の)加盟は容認できない」と批判。イスラエルは、同国が代行して徴収した税金をパレスチナ側に支払わずに凍結するなど、パレスチナ側へのけん制を強めてきた。
ネタニヤフ首相は現在、右派や極右、ユダヤ教系の宗教政党などと連立協議を進めており、今後発足する新政権の外交姿勢はより強硬になる可能性が高い。
パレスチナ自治政府はイスラエルの軍事攻撃で多数の民間人が犠牲になったと主張している。これに対し、イスラエル側は、ガザを実効支配するイスラム原理主義組織「ハマス」が一般市民を「盾」とするため、学校や病院などからイスラエル領にロケット攻撃を加えた写真や衛星画像などの証拠などを用意しているもようだ。
中東和平交渉はすでに暗礁に乗り上げており、パレスチナのICC加盟を機に、イスラエルとハマスとの対立が再燃する懸念も出ている。