【ワシントン=共同】太陽から地球にもたらされる熱を人工雲などで遮ったり、温室効果のある二酸化炭素(CO2)を直接取り除いたりすることで地球温暖化を防ごうという「ジオエンジニアリング(地球工学)」と呼ばれる手法は、現時点ではほとんど役に立たないとする報告書を米科学アカデミーの研究評議会が1日までにまとめた。
ジオエンジニアリングは一部の科学者が実施を提唱している。報告書は環境に思わぬ悪影響を及ぼす危険があると警告し「人間活動による温暖化ガスの排出を劇的に減らす以外に温暖化による影響を防ぐ道はない」と結論付けている。
光を反射する微粒子を上空に散布したり人工的な雲をつくったりして地上に届く太陽光を減らす手法について「気温上昇を抑える効果は一時的」と指摘。大規模に実施すると、オゾン層や降雨パターンなどへの影響が懸念され、温暖化対策の切り札としては「合理的でなく無責任だ」として実施しないよう求めた。
触媒などを使って大気中のCO2を吸収する手法は研究室レベルでは可能だが、進行する温暖化を防ぐには大規模な実施が必要。膨大なコストが課題となるため、森林を回復させるなど自然のCO2吸収能力を高める方が現実的だとした。
仮に温暖化ガスの排出削減が遅れ、最終手段としてこれらの手法を導入する場合でも、科学的、倫理・社会的な意見を広く受け入れるべきだと強調している。