政府は3日、運用成績でもらえる年金額が変わる確定拠出年金法の改正案を国会に提出した。私的年金の一種である確定拠出年金の条件を緩め、主婦や公務員など誰でも使えるようにする。働き方の多様化にあわせ年金資産を転職先に持ち運びやすくする。財政悪化が進む公的年金を補完する私的年金の拡充を急ぐ狙いだ。
確定拠出年金には、個人が自ら加入する「個人型」と会社単位で加入する「企業型」がある。改正案が成立すれば、2017年1月から専業主婦など(950万人)、公務員(440万人)、企業年金に加入している会社員(約1300万人)の計2700万人が個人型の確定拠出年金を利用できるようになる。掛け金上限は専業主婦の場合年27万6000円、公務員は14万4000円だ。
約500万人が加入する確定拠出年金は、政府が運営する国民年金や厚生年金に上乗せする企業年金の一種だ。受取額が決まっている確定給付年金と違い、掛け金の運用成績で受け取る年金が変わる。投資信託など運用商品は加入者自らが選ぶ仕組み。掛け金全額を所得から差し引けるうえ、運用で得た利益は非課税になる。
今回のもう一つの改正点は、転職や出産後の再就職などそれぞれの事情にあわせて、確定拠出年金を持ち運べるようにした点だ。
これまでの制度では、確定給付型年金なら転職時に移管することは可能だった。だが、確定拠出年金の場合、新しい職場の企業年金が確定給付型だと持ち運べなかった。制度改正により、自分が加入する確定拠出年金を新たな勤務先に移管できるようになる。
改正案には中小企業の企業年金普及策も盛り込んだ。従業員が100人以下の企業を対象に、掛け金の上限を5000円程度に抑えた「簡易型確定拠出年金制度」をつくる。保険料の負担や商品数を絞る。金融機関に事務を委託できるようにし、中小企業の事務負担を軽くする。解散が相次ぐ厚生年金基金の受け皿とする考えだ。