昨年9月に噴火した御嶽山(長野、岐阜県、3067メートル)を駆け上る自転車レースが今年も6月に開催される。気象庁が1月に噴火警戒範囲を縮小したことを受けて主催団体が決断した。安全対策は今後具体化させる。自転車人気に伴い、舗装された峠道を上るレースは各地で開催されているが、噴火の危険を考慮して中止を決めたレースもある。
御嶽山のレースは「ヒルクライム・イン・王滝村」。噴火後、捜索ヘリコプターの発着場所となった標高890メートルの運動公園からスタート。参加者はときに視界の真正面から山頂が飛び込んでくる峠道を一気に駆け上がる。立ち入り規制範囲内だった標高2180メートルの7合目がゴールだ。
主催する「パワースポーツ」(神奈川県鎌倉市)の滝川次郎社長(51)は「噴火で被害を受けた方がいることや再噴火の可能性などの懸念はあったが、王滝村の活性化を期待して、あえて開催を決めた」と話す。
御嶽山では入山規制を意味する噴火警戒レベル3が続いている。6月開催に向けて、地元の関係機関との協議を本格化させ、レース中に火山活動を把握できる態勢づくりを急ぐ。地元消防は「火山用ガス検知器の活用など、できる限り協力したい」としている。
火山活動の変化により中止を決めたヒルクライムレースもある。群馬県の草津白根山が舞台の「ツールド草津」は毎年4月に開催され、競技シーズンの幕開けを告げる大会。雪の回廊を走り抜けるコースに魅せられ、約3千人がエントリーする人気レースだ。
草津白根山は昨年6月、火口周辺への立ち入りを規制する噴火警戒レベル2に引き上げられ、実行委員会は12月に中止を決めた。群馬県草津町の黒岩信忠町長は「安全を第一に考え、苦渋の決定をした」とする。
宮城、山形県境の蔵王山で毎年5月に開いていたレースも今年1月に中止を決定。昨年10月、ゴール地点の火山湖で火山活動の兆候が確認されていた。宮城県蔵王町の担当者は「蔵王山の避難計画を作る協議会は設立されたばかり。計画の策定期間も考えると、来年の開催にも間に合わないかもしれない」と話している。〔共同〕