スラックラインの綱渡り(中央)や、短いバットでの打撃など、工夫した練習をする至学館の部員たち
■選抜高校野球 話題校
持ち味は、相手をあっと驚かせる攻撃だ。足技を駆使して全国に「機動破壊」という言葉を知らしめた健大高崎(群馬)になぞらえ、至学館(愛知)の麻王(あさお)監督は「うちは『思考破壊』だと部員と話すんです」と笑う。
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校庭での練習は週1度で、硬式球を普段使えるのは3カ所の打撃が出来るケージとブルペンくらい。限られた練習環境で強豪校と戦うために、「相手が想像しないプレーをいかにするか」と麻王監督。無死一、二塁から犠打ではなくヒットエンドランを敢行する大胆な攻めなど、頭で相手をかき回す。
練習も創意工夫に富んでいる。バドミントンのシャトルやテニスボールを打つバットは、太くて短いものから細長いものまで様々。カウントに応じて当てたり、芯で捉えて振り切ったりできるようになるためだ。バランス向上には綱渡りのようなスポーツ「スラックライン」を採用。主将の木村は「体幹が鍛えられて打撃で軸がぶれなくなった。崩されても、最後まで振り切れるようになった」。
週末はひたすら遠征で練習試合を重ね、普段できない内外野の連係プレーを実戦の中で補う。試合中は点差があってもスクイズを仕掛けるなど、その時にある機会を大切にしてきた。
100以上あるという攻守のサインプレーには選手から監督に出すサインも。「一人ひとりしっかり考えるのが至学館の野球」と部員たち。1試合を「慣れ、対策、実行」と分割する追い上げ型のチームは昨秋、5度のサヨナラ勝ちで初の選抜出場をもぎとった。
女子レスリングで五輪4連覇の伊調馨らが輩出した元女子校。創部6年目で甲子園に初出場した2011年夏は初戦で敗れており、まずは1勝が目標だ。木村は「甲子園でも粘り強く、勝ちにこだわりたい」。(上山浩也)