リ・ジョンチョル容疑者が勾留されている警察署から出る北朝鮮大使館の車=2日午後6時29分、クアラルンプール近郊、平賀拓哉撮影
マレーシアのザヒド副首相兼内相は2日、北朝鮮国民に対するビザ(査証)なし渡航制度を6日から廃止する方針を明らかにした。ビザなし渡航は両国の友好の象徴だったが、事件をめぐってマレーシア警察の捜査を批判する北朝鮮に事実上の報復措置を発動する。
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北朝鮮は警察の捜査を「信用できない」などと批判。警察が重要参考人としている在マレーシア北朝鮮大使館の2等書記官に対する警察の面会要請に応じないことなどから、ナジブ政権が対応を検討していた。
マレーシアは2009年に、北朝鮮との間でビザなし渡航制度を始めた。北朝鮮人にとってビザなしで渡航できる数少ない国の一つだが、「工作活動の拠点になりかねない」(外務省関係者)との懸念が出ていた。政府はビザ取得を義務づけて、北朝鮮の入国者のチェックを強める考えだ。
「報復措置」でビザなし渡航の廃止がまず選ばれたのは、経済的影響が少ないことも背景にある。11年に北朝鮮国営の高麗航空が平壌とクアラルンプール間で直行便を就航させたが、国連の対北朝鮮制裁決議で14年に運航を中断。マレーシア政府によると、北朝鮮からの旅行者数は昨年、736人にとどまっていた。(クアラルンプール=都留悦史)