北海道出身の100歳を超えたお年寄りの撮影を続けている札幌市のカメラマン、小森学さん(40)が9月、写真集を出版する。これまで36人を写真に収め、出版までに1人でも多く撮るつもりだ。撮影前にはじっくり時間をかけ、歩んできた人生を語ってもらうという小森さん。「人柄に触れ、ふとした瞬間に見せる素顔をとらえたい」と意気込む。
写真集「100歳を超えた北海道人」は札幌市の出版社「柏艪舎」代表、山本光伸さん(73)が「しぐさ、表情、しわの一本一本を通して、100年生きた人間の深みを描きたい」と企画した。
インターネットのほか、病院や老人ホームでチラシを配って100歳以上の人を募集し、2013年7月から小森さんが撮影を始めた。
13年9月に撮影した新ひだか町の故三木田久之助さん(当時100)は1913年3月に馬産地として知られる日高地方で生まれ、13歳から農耕馬の蹄鉄を作る鍛冶職人の道に進んだ。戦時中は陸軍に召集され、鹿児島の騎兵隊で軍馬の蹄鉄作りを担い、戦後は故郷で再び鍛冶屋として、地元の農業を支えた。
三木田さんの趣味は80歳から始めた書道。撮影の際、書に囲まれた家の中で、大きく、力強い「謝」の字を書いた。「長い間、仕事ばかりで迷惑をかけた」。亡くなった妻への感謝を語る、三木田さんの言葉に耳を傾けながら、小森さんはシャッターを切った。
小森さんは「100歳を超えたお年寄りはみんな今日の北海道をつくった功労者で迫力がある。撮影はカメラマンとしての腕が試される勝負の場」と話している。〔共同〕