中谷元・防衛相は8日午前、来日したカーター米国防長官と防衛省で会談した。海洋進出を強める中国への抑止力を高めるため、日米の防衛協力指針(ガイドライン)を月内に18年ぶりに改定し、自衛隊と米軍の協力を大幅に広げるのを確認する。会談の冒頭、国防長官は新しい指針について「アジア太平洋地域だけでなく、それ以外の地域にも安定をもたらす」との認識を表明した。
日米防衛相の会談は2014年7月以来。2月に就任したカーター氏は初来日で中谷防衛相と会談するのも初めて。
会談の冒頭、防衛相は「日米同盟を切れ目ない協力へ発展させていきたい。新指針は日米同盟をかつてない強固なものにする歴史的な取り組みだ」と強調。国防長官は新指針は世界に安定をもたらすとしたうえで「日米同盟にとっても大きなチャンスを提供する」と指摘した。
日米両政府は27日にワシントンで外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開き、新指針について正式に合意する。新指針は中国などを念頭に、自衛隊と米軍が平時から有事まで切れ目のない協力体制を築くのをめざす。自衛隊が日本周辺以外でも物資の提供を始めるほか、これまで認めていなかった弾薬の提供や発進準備中の米軍機への給油も可能にする。
米国はアジアに安全保障の重点をおく「リバランス(再均衡)政策」を進め、東シナ海や南シナ海で活動を活発にする中国を注視している。一方で国防費は削減の流れにあり、自衛隊が米軍の肩代わりをすることへの期待は大きい。会談で国防長官が南シナ海の警戒監視で自衛隊への期待に言及する可能性もある。
会談では、沖縄県の翁長雄志知事が反対している米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を計画通り推進する方針も申し合わせる。冒頭で防衛相は移設作業について「堅実に進めていく。米国のリバランス政策の一環でもあり、非常に大事だ」と強調。国防長官は普天間移設を含む米軍基地の再編は「日米が同盟の仕事を継続する上で、極めて重要な要素だ」と述べた。
国防長官は8日、安倍晋三首相、菅義偉官房長官、岸田文雄外相とも個別に会談する。菅長官は8日午前の記者会見で「沖縄県の負担軽減に向け、一日も早く沖縄の思いが実現できるようにしたい」と述べ、米軍嘉手納基地以南の施設・区域返還などを早期に実現できるように求める考えを示した。
国防長官は9日から11日までは韓国を訪問。その後、ハワイの米太平洋軍司令部に立ち寄り、12日に米国へ帰国する。