警視庁は10日、パソコンに感染してインターネットバンキングの不正送金を指示する新型ウイルスと海外の指令サーバーを突き止め、国内外の8万2千台のウイルスの無力化を始めたと発表した。セキュリティー会社と共同開発したプログラムを活用した。パソコン所有者やプロバイダー(接続業者)に情報提供して不正ウイルスを除去する対策はあったが、捜査機関が直接、ウイルスを無力化するのは海外を含めて異例という。
新型ウイルスに感染したパソコンでネットバンキングのサイトに接続するとウイルスが活動を始め、利用者の預金が不正送金されてしまう。
警視庁は約100万円の被害に遭った石川県の30代女性から感染パソコンの提供を受け、不正送金を指令していた海外のサーバーを特定。国内の4万4千台を含む8万2千台のパソコンを感染させ、操っていたことが判明した。その後も週に数千台規模の感染が判明しているという。
同庁は指令サーバーになりかわり、同庁の監視コンピューターから感染パソコンに接続。セキュリティー会社「セキュアブレイン」(東京)と共同開発したプログラムを「解毒剤」として働かせ、ウイルスを無力にした。この手法は今後新たに現れるウイルスにも応用できるとみている。
警察庁によると、新型ウイルスは昨年、被害を初確認。金融機関が不正送金対策として導入した1回ごとの「ワンタイムパスワード」も突破するため対策が急務だった。
不正送金はできなくなったとみられるが、同庁は国内の300社超のプロバイダーなどに情報提供し、パソコン利用者に改めてウイルス除去を呼びかける。海外の3万8千台の感染パソコンについては国際刑事警察機構(ICPO)にIPアドレスを提供し、各国の捜査機関に対策を促す。