ヤクルトの新人右腕・菊沢
苦難の道を乗り越え、プロへの扉をこじ開けた28歳の新人投手がいる。軟式野球チームからヤクルトにドラフト6位で指名された菊沢竜佑投手(相双リテック)。ヤンキースの田中将大らと同学年だ。17日、DeNAとの練習試合に初登板し、2回3失点。「投げ急いでしまいました」。ほろ苦い実戦デビューとなったが、右腕は「次はがんばりたい」と目を輝かせる。
軟式野球出身でプロで活躍した投手には、野球殿堂入りした大野豊さん(61=元広島)らがいる。菊沢もまた、異色の経歴の持ち主だ。秋田高から立大に進み、東京六大学リーグで1勝を挙げたが、3年時に右ひじを手術。卒業後は野球をやめ、製パン会社に就職した。営業職で多忙な毎日だったが、野球への思いを断ち切れず、1年後に社会人のクラブチーム(硬式)で野球を再開。その1年後には野球に専念するため会社を退職し、バッティングセンターでアルバイトをしながらプレーを続けた。
その後、巨人の入団テストを受けて通過。ドラフト指名からは漏れたが、プロ志向が強まって、2015年に米国へ渡って独立リーグでプレーした。その年の秋に帰国し、軟式野球の強豪・相双リテックに入社。軟式での活躍がプロ野球スカウトの目にとまった。
軟式から硬球に握り替えてまだ日は浅い。「違和感が全くないとはいえないですが……」。課題は変化球の制球。球種はスライダー、フォーク、シュート、カーブだが、この日は1イニング目にシュートで死球を与えてリズムを崩した。2イニング目は甘いフォークを本塁打された。「プロは甘い球は見逃さないですね」。ただ、直球は17日に最速145キロを計測。球速はまだ伸びそうだ。
真中監督は「今日はいい球と悪い球がはっきりしていたが、まだまだチャンスはある」と語る。菊沢も「もっと制球力を磨き、レベルの高い投球をしていきたい」。1軍入りを目指して練習に打ち込んでいる。(吉村良二)